最低賃金が10月から順次引き上げ|会社担当者が今すぐ確認すべき3つのこと

「うちの会社、最低賃金の対応って結局何をすればいいんだっけ?」

毎年10月が近づくと、こう思う人事担当者の方も多いのではないでしょうか。

私自身、人事担当として11年間、この時期になると「金額大丈夫かな?」と最低賃金のチェックに追われてきました。

それでは始めましょう。

目次

前提として:最低賃金とは

最低賃金とは、国が法律(最低賃金法)に基づいて、賃金の最低額を定め、使用者はその最低賃金額以上の賃金を労働者に支払わなければならないという制度です。

最低賃金には、都道府県ごとの「地域別最低賃金」と特定産業ごとに決められた「特定(産業別)最低賃金」があり、使用者は高い方の最低賃金額以上の金額を支払わなければなりません。

制定の理由

資本主義であるにも関わらず、なぜ最低賃金という取り決めが法律で定められているかについては下記の通りです。

労働者の生活の安定

会社側が一方的に低い給与額を決めて、労働者の生活ができなくなることを防いでいます。

労働者と使用者は対等と言っても、実質的には労働者に給与を支払う使用者の方が立場は上です。

労働力の質的向上

労働者の生活が最低賃金法で守られることで、労働者が働く意欲やスキルを高めることに繋がることを目的にしています。

その日暮らしの状態では、生きることに必死になり、自分のスキル向上のための勉強などには手が回りません。

事業の公正な競争の確保

労働者に支払う人件費を著しく下げて、不当に安くモノやサービスを売ることによる企業間の競争を防いでいます。

昭和の日本のように、サービス残業で支払うべき給与額を下げてまでモノやサービスを売ることを禁止しています。

この法律は、賃金の低廉な労働者について、事業若しくは職業の種類又は地域に応じ、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もつて、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

出典:最低賃金法第1条(目的)

最低賃金額の対象は?

最低賃金額の対象となるのは、「基本給+(毎月決まって支払われる)諸手当」です。

この金額を時給に割り戻して最低賃金と比較します。

最低賃金の対象となる賃金は、毎月支払われる基本的な賃金です。
具体的には、実際に支払われる賃金から次の賃金を除外したものが最低賃金の対象となります。
  (1) 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
  (2) 1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
  (3) 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
  (4) 所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
  (5) 午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
  (6) 精皆勤手当、通勤手当及び家族手当

出典:厚生労働省

結論:確認すべきは「発効日」と「最低賃金に近い層の給与」

実務的に最低賃金改定で会社担当者がやるべきことは、自社の管轄する拠点の都道府県の最低賃金の発効日を確認し、新基準を下回っていないかをチェックすることです。

これができていないと、知らないうちに法律違反の状態で従業員を雇用し続けてしまうことになります。

一方で、最低賃金の上昇幅は近年、大きくなっています。物価高等もあり、毎年の上昇がほぼ、当たり前になっていますので、企業経営者の方は資金繰りにも注意が必要です。

2026年10月改定のポイント

2026年度の地域別最低賃金は、全国加重平均で1,177円(前年度比+56円)に改定されます。ここで注意したいのが、都道府県ごとに発効日が異なるという点です。最も早い地域では10月1日から、最も遅い沖縄県では12月2日からと、最大で2ヶ月以上の差があります。

都道府県 新しい最低賃金 発効日
東京都 1,280円 2026年10月1日
神奈川県 1,279円 2026年10月1日
埼玉県 1,196円 2026年10月1日
千葉県 1,195円 2026年10月1日
宮崎県ほか 1,085円 地域ごとに10月〜12月で異なる

複数の拠点を持つ会社では、拠点ごとに発効日が違うため、例えば「東京はもう改定されたのに、沖縄はまだ」といった状態が数ヶ月続くこともあります。

会社担当者が今すぐ確認すべき3つのこと

  1. 自社の管轄都道府県の発効日と新賃金額を確認する
  2. 最低賃金に近い層の給与を点検する(パート・アルバイト・契約社員・高卒社員を中心に)
  3. 求人票・求人媒体の時給表記を更新する

見落としがちな注意点【実体験】

正直に言うと、この3つを「知っている」だけでは対応にならない、と痛感した経験が2つあります。

ひとつは、本社が首都圏以外にあり、全国一律の基本給を設定していた会社でのことです。地方の相場に合わせて基本給を決めていたため、東京都内の拠点で働く高卒社員の時給換算額が、東京都の最低賃金を下回りそうになっていました。

「全国一律」は管理のしやすさというメリットがある一方で、最低賃金が最も高い東京都の基準を毎年クリアできているかを、意識的に確認する仕組みがないと見落とします。

もうひとつは、各現場で事務を担当していた契約社員の時給です。本社の管理部門とは別に、現場単位で採用・時給決定をしていたため、本社側が把握していない時給テーブルが複数存在していました。

最低賃金改定のタイミングで現場ごとに確認して回ったところ、実際に基準を下回りそうな時給設定が見つかりました。

この2つの経験から学んだのは、「全社一律の基本給」や「現場ごとの時給設定」は、最低賃金改定のたびに個別確認が必要になりやすい、ということです。特に複数拠点・複数雇用形態がある会社では、本社の人事担当者が把握していない給与テーブルが現場に存在していないか、改定のたびに洗い出す作業が欠かせません。

特に建設現場が全国に散らばりやすい建設業などは、その地での最低賃金が適用されるため、必ず確認が必要です。

まとめ【最低賃金改定は「知っている」だけでは対応にならない】

2026年度の最低賃金改定は、全国加重平均1,177円、発効日は都道府県ごとに10月1日〜12月2日とバラつきがあります。

人事担当者は、①発効日の確認、②最低賃金に近い層の給与点検、③求人票の更新、の3点をまず押さえておく必要があります。

ただ、それだけでは足りないケースもあります。全国一律の基本給や、現場ごとの時給設定がある会社では、本社が把握していない給与が最低賃金を下回っていないか、あらためて洗い出すことをおすすめします。

いかがでしたでしょうか。今回は以上になります。

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この記事を書いた人

社労士・宅建士・FP1級などの資格を持つ筆者が社労士開業に向け、試行錯誤しているブログです。迷走していますが、前に進んでいると思いたい、そんなブログです。

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